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もう既に辞めてしまっているが 、僕が音楽の世界へ入ったのはある人にスカウトされたのがキッカケだった。
当時僕は名古屋の錦というネオン煌めく夜の街で小さなバーのバーテンをしていた。そのバーへは16才のとき、友達に面白いバーを見つけたから飲みに行こうと誘われて行ったのが始まりで、それ以来、僕はすっかりそのお店とマスターが気に入ってしまい、知らず知らずのうちに一人でも飲みに行くようになった。 そして 知らず知らずのうちに毎晩のように通うようになり、知らず知らずのうちに毎晩呑んだくれるようになってしまったのだ。
マスターはそんな僕を見るに見かねたのか、お店が忙しい時などに僕に雑用を頼むようになり呑み代を取らなくなった。そしてまたまた知らず知らずのうちにアルバイトとして給料まで貰うようになっていたのだった。
僕はそんな面倒見のいいマスターに憧れ、いつかは自分もこんな店を持つんだという小さな夢すら持つようになっていった。
そんなある休みの日のこと。僕はお店のお客さん四人(四つくらい年上の女性)を引き連れ(と言うより連れられ)近くのライブハウスへ遊びに行き、大好きなバーボンを飲みながらライブを楽しんでいた。
そしてステージが終わると店員さんが僕のところへ来て「あのー、ちょっとすいません。ウチの店長がお話したいことがあるそうなのですが少しお時間よろしいでしょうか。」と尋ねてきた。 僕は何だろうと思いながらも「ええ少しならと」気さくに答えライブハウスの隣の喫茶店へ案内された。
喫茶店の中に入っていくと、そこにはライブハウスの店長さんと何だか物凄く威圧感のある何処かで見たことのあるような人二人の三人が座っていた。 『なんか嫌な感じだなぁ』と思いながら近寄っていくと、店長さんが人の良さそうな笑顔で「ゴメンね。ちょっとこちらの方々がお話があるそうなので。」と言って自分達の座っている席に僕を招き寄せ、なんか嫌な感じの二人を紹介した。
二人は東京の某プロダクションの社長さんとプロデューサーだと言うのだ。 何処かでみたことあると思ったら、二人はそれぞれ違うグループだったが、GS時代に活躍していた人たちだったのだ。 勿論僕はGS世代ではないが、社長さんの方は俳優もやっていて、僕の大好きな松田優作さんとテレビや映画で何度も共演していたので、それで見覚えがあったのだ。
僕は内心『うわっ!芸能人じゃんか!!』と少し動揺してしまったが、そんな素振りは一切見せずに「話しというのは何でしょうか」とクールに装ってみせた。
すると社長さんが「君は今何をしているんだ?」と尋ねてきた。
僕「この近くのバーで働いてます」
社長「ダメだ!水商売なんてやってちゃ」
僕は『なんでこんな初対面のオッサンに説教されなきゃいけないんだ』とちょっとカチンときながらもそこはクールに「ダメですかねぇ。僕はこの仕事が気に入ってますしこの道でやっていこうと思っているんですけど」と答えた。
すると今度は僕の耳を指差し「なんだその耳は!男がそんなもん(ピアス)するんじゃねぇ」というのだ。(今でこそ男がピアスをしていても珍しくはないが、その当時はまだ僕のような超ウルトラ・スーパーお洒落な男はあまり居なかったのだ。ちなみに僕はその当時左の耳に5つ穴を開けていた。)
そして社長は続けて「お前水商売なんか辞めて歌をやってみないか」と言うのだ。
僕は心のなで『冗談じゃない。初対面でいきなり説教をするは、僕が本気でこの道でやっていくんだと思っていた仕事を否定するは、そんな失礼極まりない奴に「ハイそうですか」とこの俺が付いて行くとでも思うのかっ』ともうブチ切れ寸前でこれ以上黙って聞いていたら手が出てしまいそうなくらい頭にきていた。
でもさすがに手を出すのは良くない。
手が出てしまう前に僕は怒りに震える手を必死に押さえ、プロダクションの社長だか俳優だか何だか知らんが、とにかく目の前にいる礼儀知らずの偉そうなオッサンにキッパリハッキリこう言い放ってやったのだ。
「是非宜しくお願いします。・・・・・・・????!!!!」
僕は自分で自分に呆気にとられ、ちょっと表現は古いが一瞬『此処は何処!貴方は誰!』の世界へ迷い込んでしまっていた。
それから一ヶ月後、僕は東京へと上京し、気が付いたらステージに立っていたのだった。
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