僕は小・中学校とサッカー部に所属していた。
小学校の時のチームはとにかく弱く、余所の学校と試合をしてもいつも負けてばかりだった。
サッカーというには程遠い感じで、自分のところにボールがきたら『うわぁ〜ボールがきた〜、とりあえず蹴っちゃえ〜』といった具合で、フリーになっている見方チームの選手にパスをするという、サッカーをする上で一番初歩的なことすら出来ないほど余裕の無い者までが試合に出場したりしていたのだ。
中には空振りをしてすっ転ぶ者、ボールを蹴ったはいいがそのボールが何処へ飛んで行くか分からない者、シュートしたと思ったら靴だけが飛んでいる者などもいた。
当然そんな奴等ばかりではなく、僕を含めて四・五人は上手い選手もいたがそれだけでは余所のチームに勝てる筈もなかった。
そんな弱小チームでイライラしながらも部活に専念していたある日、ゴールキーパーの遠藤が手の指の骨を折ってしまったのだ。
そこでサッカー部の顧問をしていた石橋先生が、僕等部員を集めて「誰か遠藤の代わりにゴールキーパーをやってみたい奴はいるか?」と聞いてきたが誰も手を挙げようとしなかった。
ゴールキーパーというポジションはかなり危険なポジションで、手が使えると言っても至近距離からおもいっきり蹴ったボールを受けたり、シュートしようとしている相手選手の足元にスライディングをして体を張ってゴールを守るため、間違って身体や顔を蹴られたりすることもあるので相当勇気がないと務まらないのだ。
ゴールキーパーとは本来そういうポジションなのだが、僕等の小学校時代のゴールキーパーのイメージは、ちょっとデブで足の遅い奴がやるもの(ゴレンジャーで言えば黄レンジャーである)というイメージもあり誰も手を挙げなかったのだと思う。
石橋先生はみんなの気持ちを分かっていたのか、『これは困ったなぁ』というような顔をして少しの間黙っていた。それを見ていた僕は、
「誰もやりたくねぇんだったら俺がやってやるよ!」と言って立ち上がった。
そしてみんなは僕を尊敬の眼差しで見上げていた。・・・っと勝手に僕は思った。
石橋先生は僕がゴールキーパーになると攻撃力が落ちるが、それも仕方ないと思ったらしく、「よし、じゃあ決まりだな」と言って、その日から僕はゴールキーパーになった。
本当のことを言うと、僕がゴールキーパーになったのには、正義感や責任感からではなく、実はある想いが頭を過ぎったからである。
それはどういうことかと言うと、確かにゴールキーパーは危ないし怪我も多いし、ストライカーに比べてあまり目立たないポジションではあるが、少し考え方を変えてみれば、
僕のチームは弱い。
弱いと言うことは=常に相手に攻められている。
攻められていると言うことは=ゴールキーパーの出番が多い。
出番が多いと言うことは=それだけ目立つ。
目立つと言うことは=カッコイイ。
カッコイイと言うことは=女の子にモテモテ。
女の子にモテモテと言うことは=僕がやらないでどうする。
という結論に達したために、あえてゴールキーパーというポジションを選んだのだった。
ゴールキーパーになってしばらくたったある日、練習試合のため僕等O川小学校サッカー部は隣町のK崎小学校へ乗り込んだ。
そして試合開始のホイッスルと同時に、相手チームを応援するK崎小学校の女子の黄色い声援がグラウンドに飛び交った。と同時に相手チームがどんどん攻めてきた。
そして一発目のシュートが僕の守るゴール目掛けて飛んできた。それを僕は超ウルトラ・スーパー・ダイビングキャッチで防いだ。そして、K崎小の女子生徒の悲鳴と溜息が聞こえてきた。
その後もK崎小の攻撃はとどまる事無く続いたが、その度に僕は超ウルトラ・スーパー・ストロング・スペシャル・ダイビングキャッチで防ぎ、前半を終了した。
その頃になると、K崎小の女子の僕を見る目が、それまでの憎き敵の邪魔野郎から、だんだん憧れの眼差しに変わってきていた。と僕は勝手にそう思っていた。
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