クリスマスプレゼント
 僕の誕生日は12月25日。 そうクリスマスである。
 誕生日がクリスマスと言うだけで「へ〜いいなぁ!」とか「キリストと同じじゃん!ひょっとしてキリストの生まれ変わりなんじゃない!」とか「スゲ〜!」とか「ロマンチックでいいなぁ〜!」とか「やっぱイイ男はそういうところから違うんだよなぁ!」等々訳の分からない事をよく言われた。
「へ〜いいなぁ」って何がどういいんだ?いいことなんかあるもんか。お前等みんな誕生日プレゼントとクリスマスプレゼント両方貰ってただろう。俺なんて何時も誕生日とクリスマス兼ねて1個しか貰えねぇんだぞ!大好きなケーキだってそうだよ、ケーキを買って貰える日が一回少ねんだぞ!
「キリストと同じじゃん!ひょっとしてキリストの生まれ変わりなんじゃない!」って、俺はクリスチャンじゃねぇーし、それ以前にそんな訳ねぇーだろ。
万が一そうだとしたらもっとまともな人間になっとるっちゅうねん。
「スゲ〜!」って、全然スゴかねぇーよ。
「ロマンチックでいいなぁ〜!」って、ロマンチックなのは街の雰囲気とカップルだけだろ。
「やっぱイイ男はそういうところから違うんだよなぁ!」って、まぁ〜ね!そりゃそうさ!納得!!

 冒頭からいきなりボヤイてしまったが、要するに僕はクリスマスにあまりいい経験をしたことが無かったのだ。 それなのに、オッサンになってしまった現在でもクリスマス近くになると心躍ってしまうのは何故だろう。 僕はそんな乙女のようなオッサンである自分が大大・大・・・・・・大好きである。。。。


 そんなことはさておき、まだ僕が幼かった頃の話だが、僕にはどうしても欲しいクリスマスプレゼントがあった。 それはべつに高価な物でもなければ、珍しい物でもなく、何処にでも売っていて、男女問わず多分殆どの人が幼い頃一度は貰ったことがあるのではないかと思われるクリスマスプレゼントの定番中の定番である。 
 僕は毎年クリスマスが来る度にそれが欲しくて欲しくてたまらなかったのだが、もし母親にそれが欲しいなどと言ってしまったら、その何倍もする高価なオモチャが買って貰えなくなってしうかもしれないし、それが欲しいと言ったことが兄貴や姉貴にバレてしまったらきっとバカにされるに決まっている。何時もそんな思いと葛藤しながら結局オモチャを買って貰っていた。

 そんなある年のクリスマスに、僕は母親と一緒にデパートに買い物に行った。そしてお菓子売場を通りかかったとき、既に僕のクリスマスプレゼントは買ってあることを知っていた僕は、こんなチャンスは二度とないかも知れないと思い、勇気を振り絞って母親に言ったのだ。
 「ねぇお母ちゃん。オレあれ欲しいなぁ!」っとお菓子売場の特設棚にズラーッと並んだ真っ赤な長靴の中にお菓子の詰め合わせの入ったやつを指差したのだ。
 何を隠そう僕が欲しくて欲しくてたまらなかったのは、クリスマスプレゼントの定番であるあの長靴に入ったお菓子の詰め合わせだったのだ。正確に言うと長靴に入ったお菓子の詰め合わせではなく、お菓子の詰め合わせの入っている長靴が欲しかったのだ。
 そんな可愛くて愛くるしい息子の僕に母は「アンタあんなモンが欲しいの?あんなモン買うんなら欲しいお菓子だけ別で買った方がいいに決まっとるがね。アホか!」である。 全く子供心の分かっていない母親である。
 なんとなく予測はしていたがやはりショックだったし、それにアホかはねぇーだろアホかは、 「アホか!」
 結局その年もあの長靴は買って貰えなかった。

 それから何年か経ち、僕が小学生の高学年になった頃だっただろうか。
 僕の家は本家だったためお正月になると親戚中が集まるのだが、その中に僕よりも幼い従兄弟がいて、その子がクリスマスに貰ったのであろうあの長靴を持ってきていた。 それを発見してしまった僕の頭の中は『頼むからそのまま置いていってくれ』『僕の家にいる間にお菓子を食べきってくれ』そんな思いで一杯になり、とても正月気分を味わうどころではなかったが、翌日遂にその切なる思いが叶った。

 親戚を「じゃぁね〜。また来てね〜。」と玄関まで送った僕は、すかさず居間へと走りあの長靴を手に取り、高鳴る胸の鼓動を感じながら恐る恐るゆっくりと右足を入れてみた。それはまるで会うことの許されない愛する彼女にやっとのことで逢えた時の様な(そんな経験はしたことがないが)そんな涙がちょちょ切れんばかりの天にも昇る夢の瞬間だった。

「・・・。」「・・・うっ?」「そっ・・・そんな?」

 地獄に堕ちる悪夢の瞬間である。
 ぼくは長年待ち続けたのと嬉しさのあまり、長靴より自分の足の方が大きくなっていることに気付いていなかったのだ。それでもやっと叶った夢なんだからと、胸を切り裂かれる様な思いに打ちひしがれながらも、必死に痛みをこらえ無理矢理足をねじ込み、右足だけつま先立ちで2、3歩よろめきながら歩いてみた。 ハッキリ言って面白くも何ともない。 虚しさだけが込み上げてくる。 「畜生・・・もう3年早ければ・・・。」

 そして僕はこの時、『夢の儚さ』『夢とはそれを掴むまでのプロセスがいいのだ』ということをしり、つまらない大人への階段を一つ登ったのだった。


 PS. 今でもクリスマスシーズンにると、あのお菓子の詰め合わせの入った真っ赤な長靴を履いてみたくなる。出来れば両方の足に!!
 皆さんはこんな少年のような心を持ったボクを
・・・ん?・・なに?・・キモイ?キモイ言うなコノヤロー!!!